勝手にサンドバッグ

今週のお題をネタに小説を書いたり、考えたことを書きます。

私の未来予想図

▪️ 今回のテーマ:私の未来予測図

 

状況は非常に良くなかった。

何せ、まるで手も足も出ない。

「話が違うよボス…!」

僕は顔も声も知らない男にボヤきながら、打開する策を探っていた。

 

「私の能力の前に敵はいない。」

最初は何を言っているんだこの男?と思いつつ、いつもの通り作戦を遂行してすぐに引き上げるつもりだった。

しかし、こちらのナイフが空を切り続けるこの状況は、その言葉がハッタリではないことを物語っていた。

 

自慢ではないが、僕の腕はそこそこ立つ。そして僕ほどではないが、既にどこかの床に伏す同僚も勿論プロフェッショナルだ。しかし、5人で突入したにも関わらず、20分と経たずしてこのざまだ。

 

最初に突入したのはジョーとアマンダ。彼らが屋上からロープを使って窓から突入し、間髪入れず、僕も含む残りの3人が扉を破って突入する手筈だった。

しかし、ジョーとアマンダが突入した部屋はもぬけの殻。ターゲットの代わりに大量の時限爆弾が彼らを迎えた。

残り3人。

 

「ちくしょう!アマンダ!」

バッカルコーンが怒りに任せて壁を殴る。そしてしゃがみ込むバッカルコーン

「…?どうしたでやんす?バッカルコーン?」

バッカルコーンと仲の良いヤベが声をかける。しかし、バッカルコーンは床に崩れた。

「ひぃっ!」

ヤベが声を上げる。しかしヤベもプロだ。バッカルコーンの死、そして殴った壁を確認する。

「針…でやんすね。」

そこには髪の毛ほどの細い針があった。どうやらバッカルコーンはこの針にやられたらしい。毒が塗ってあったのだろう。

残り2人。

 

残りは僕、ヤベ。ターゲットはもうこのビルにはいないかもしれない、そう思いながらも僕たちは探索を続けた。

吹き抜けの部屋に出ると、階段がある。

警戒しながら階段を上がると、鉄の扉。どうやら、屋上に辿り着いたようだ。

そして僕たちは遂に出会った。和かな笑顔を湛えた初老の男。名前と素性は知らないが、写真と同じ人物だ。

 

「やってくれたでやんすね…。よくもアマンダとバッカルコーンを…。」

私情を持ち込むな、と言いたかったが、言ったところでどうなるものでもないので、僕は言葉を飲み込んだ。

「いつも通りで行こう、ヤベ。」

そう声をかけた時、既にヤベは200メートル下に向かって落ち始めていた。

ヤベの足元の床が綺麗に崩れていた。吹き抜けを通じて地上まで一直線だろう。

 

「ヤベ君、運がないね、彼も。」

初老の男が僕に語りかける。

「君たちがこのビルに侵入して来るのは知っていたよ。その後どんな行動を取るのかも、手に取るように分かっていた。それが僕の能力だからね。」

「能力?」

漫画じゃあるまいし、イかれた奴に付き合う気は無かったが、情報は貴重だ。

「私の能力の前に敵はいない。この私の"未来予想図"の前にはね!」

 

そこからは一方的だった。ナイフは空を切り、隙を見てターゲットがローキックを入れてくる。地味だがキツイ。

「この能力は素晴らしい!まさに無敵だ!あのアマンダも居なくなったのだからね。」

「…?アマンダがどうした?」

僕がターゲットの言葉を理解しあぐねていると、

「残念。居なくなってないよ。」

階段の方から声がする。それはよく知る声。アマンダの声だった。

 

「アマンダ…!貴様!何故!爆死した筈では…!」

「ジョーが盾になってくれたの。そして私は今まで死んだふり。あなたの能力は未来の予想図を"映像"として投影する。だから死んだふりはとても有効。クマより単純ね。あなたの能力の弱点はよく知ってる。」

ニコッと微笑むアマンダ。

「なんせ、それ、元々私の能力だし。返してもらうよ、私の"未来予想図"。」

 

後でアマンダから聞いた話だが、昔、マルコムという男、つまりターゲットに能力を奪われ(それが彼の能力だったようだ)、それ以来能力の奪還条件を満たすために追っていたらしい。

奪還条件は、対象と会話をすること。つまり、突然のアマンダの登場に動揺したその時、能力の所有権はアマンダに移ったのだ。

 

そこから僕は迅速に仕事をこなし、アマンダと帰路に着いた。

 

「今回はハードだったんじゃない?」

アマンダが話しかけてくるが、こちらは疲れ切っている。

「ごめんアマンダ、ちょっと疲れたから寝ても良いかい?頭が追い付かなくて」

「あら、それなら2週間ほどバカンスでもどう?ゆっくりしたらいいわ。」

「そんな休みが貰えるなら、ボスを抱きしめてキスしちゃうね。」

 

それからどうなったか。ここまで"予想"してたのかい?アマンダ?

 

終わり

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